手をかけて生きた芸術に仕上げる神髙福松園
愛好家の細かなニーズに対応
神髙福松園は祖母の代から60年続く盆栽園で、神髙毅さんは3代目です。
毅さんが園を継ぐことを決断したのは大学4年生の時。やりたくても誰もができる仕事ではないと感じたことが理由。しかし、子どもの頃から身近にあった盆栽も、仕事となると勝手は違い当初は苦労したと言います。
神高福松園のお客さんは実際に訪れ、目で見て購入を決める方がほとんど。
「こんな木を探してほしい」と連絡があれば、金額・大きさ・樹種・樹形といった条件に合うものを揃えます。自園にない場合は大阪、京都、西日本各地の園を探すことも。西日本の盆栽園が集まる交換会に参加し「あの園にはこんな盆栽がある」と記憶しておきます。それによりお客さんの細かいニーズに対応できるのです。
近年ではヨーロッパやアジア、南アフリカからの愛好家も園に訪れます。
2011年に高松市で開催された「第11回 アジア太平洋盆栽水石大会」は、海外の愛好家が高松盆栽を知るきっかけになりました。
「盆栽に対して日本人はお年寄りの趣味という先入観がまだある。でも外国人は純粋にその魅力に惹かれ感動している」と毅さんは感じています。
空間を演出する盆栽を提供
2代目の國廣さんのころより盆栽のリースにも力を入れてきました。
旅館や高松市長の応接室に常設展示をしたり、式典に貸し出すこともあります。常設展示とはいえ日の当たらない室内に置き続けると枯れてしまうため、定期的な入れ替えが必要。
また、木には「右流れ」「左流れ」といった枝の向きがあり、式典では演台や主賓の位置を確認しながら、適した盆栽を選んでいます。
手がかかった分だけ愛着が生まれる
盆栽は年月がかかるもの。種から育てていては若木しか扱えません。そのためよい素材があれば購入し、形にすることもあります。よい素材の見極めは、将来の姿を描けるかどうかだと言います。
「1つよいところがあれば、それを最大限に活かしていく」
木の裏表を逆にすることもあれば、幹の上部を思い切り飛ばすこともあるそう。水やり1つをとっても世話をする人により全く違う木になる、まさに生きた芸術なのです。
思い入れのある盆栽を尋ねると、緩やかな枝ぶりで柔らかい雰囲気の黒松を選んでくれました。一度お客さんの手に渡ったものの弱ってしまい、再び手入れをして3年。手がかかった分だけ愛着があると語ってくれました。
神髙福松園(かんだかふくしょうえん)
- 住所
- 香川県高松市鬼無町山口418-3
- TEL
- 087-881-3812