感性を磨いて作風を高める出上吉洸園いでうえきっこうえん

盆栽の「技術」を大切にしたい

風格ある黒松や真柏、五葉松が並ぶ出上吉洸園の園主は2代目・出上文雄いでうえふみおさん。会社勤めの傍ら盆栽の世話をしていた父の園を継いで50年になります。

東京の盆栽展を見てその技術の高さに衝撃を受けて以来、先輩たちから作風を学び、針金かけの技術を磨いてきました。
「よいものを作り、高く評価してもらうために技術の鍛錬が一番。今でも怠りません。一時期、買い手が減ったこともありましたが、今は国内にとどまらず外国からのお客さまにも恵まれ、盆栽の生産が追いつかない状況にあり、大変ありがたいことと感謝の日々です」
培ってきた技術を生かして、令和の時代にも風流な盆栽を作り続けたいと考えています。

美しいものを美しいと思う感性を磨く

作風は何から得るのかと尋ねると、芸術に触れることだと教えてくれました。
出上さんの芸術の幅は広く、文学・音楽・日本画・俳句・茶道など様々な芸術に触れて感性を養ってきました。ドビュッシーの「月の光」は盆栽の枝のたおやかな流れに通じ、横山大観の荒々しい自然の中の美は「ジン」と「シャリ」になぞらえます。「ジン」「シャリ」とは幹や枝の木質部が朽ち果て白骨化したもの。盆栽では人為的に施し古色を表現します。
美しいものを美しいと思える感性が大切。「芸術は普遍性がなくてはならない」と出上さん。時代や国を問わず、美しいと感じられる盆栽を目標にしています。

科学的な根拠にもとづく盆栽管理

盆栽は芸術的なものですが、管理方法は科学的な根拠に裏付けられています。盆栽教室では論理的に説明することを心がけています。
中でも水やりは一番重要。水やりの役割は土を湿らせることと、根に溜まった二酸化炭素とアンモニアを流すこと。土が乾きかけたら水をやります。乾き切ってしまうと、かえって水がしみ込みづらくなります。根腐れを起すのは水のやり過ぎではなく、土の粒子がつぶれて排水が悪くなっているため。科学的な説明により愛好家も仕組みを理解し納得して手入れができるようになります。

愛好家の手に渡った盆栽は、展示会に出展されて、再び出会えることがあるそうです。それが何よりうれしいと笑顔で語ってくれました。

出上吉洸園(いでうえきっこうえん)

出上吉洸園外観
住所
香川県高松市鬼無町鬼無461-1
TEL
087-881-2910

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